人気ドラマ「深夜食堂」の中国リメイク版が大不評

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中国でも大人気な日本のドラマ「深夜食堂」。この中国リメイク版が今中国で大ブーイングを巻き起こしています。日本オリジナル版と中国リメイク版では一体どこが違うのでしょうか。中国のツッコミどころ満載の「深夜食堂」を見てみましょう。

「深夜食堂」とは

「深夜食堂」は安倍夜郎の漫画をドラマ化したもので、中国でも高い人気です。
ストーリーは、深夜0時〜朝7時までしか営業しない小さな食堂を舞台に、目に傷をもつ訳あり風のマスターと、これまた様々な背景をもつ客たちとの交流を描くというもの。メニューは豚汁定食と酒類しかないものの、リクエストに応じて作ってくれ、毎回懐かしさがあり思わず食べたくなる料理が登場するという飯テロ要素も盛り込まれた作品です。

この「深夜食堂」のリメイク版が6月12日から中国大陸と台湾で放送開始されています。

中国版「深夜食堂」はどのくらい不評なのか

映画・音楽・書籍の中国大手レビューサイト・豆瓣(douban)で日本の「深夜食堂」は10点満点中9.2点と高評価であるのに対し、中国版「深夜食堂」は2.5点というなんとも低い評価。

中国ではよくあるパクリドラマなのかとおもいきや、ちゃんと日本からライセンスを取っているし、大物俳優、大物女優もかなり多く出演しています。

上は中国リメイク版。下は日本オリジナル版。

星1つが87.8%(6月19日時点)

なぜそんなにも不評なのか

ブーイングを受けているポイントとして挙げられるのが下記の6つ。

①中国ドラマなのに日本に似すぎ

演じるのは中国や台湾の俳優なのに、店内のセットや衣装、人物設定などは日本版にそっくり過ぎるため、中国文化と日本文化が上手く混じり合わず喧嘩してしまっています。ちなみに日本側は必ず日本版「深夜食堂」とそっくりに作るように、といったような要求は出していません。ただマスターの目の傷はつけて欲しいとリクエストしたようです。

舞台は中国だが日本風の店構え。別に日本料理屋というわけでもない。

日本風の店内。マスターの服も作務衣。

②お茶漬けの代わりにインスタントラーメン

日本版では常連のOL3人組がお茶漬けを食べるシーンが度々出てきますが、中国版ではお茶漬けがなんとインスタントラーメンになっています。中国のレビューサイト豆瓣には、「中国人に馴染みの深い美食メニューは他にたくさんあるはずなのに、なぜインスタントラーメンなのか」と怒りを露わにした書き込みが多数あります。

「ただのインスタントラーメンじゃない」とばかりに手間をかけてみせるが、やはり所詮インスタント

③ドラマがCM化している

更に問題なのがこのインスタントラーメンがドラマの中でCMになってしまっていること。

「老坛酸菜牛肉面」というカップ麺があっちにもこっちにも

背景として何度も出てくる

左:「統一(カップ麺のブランド)老坛酸菜」とちゃっかり書いてある酸菜の入れ物。右:これが本物の「統一老坛酸菜牛肉面」だ!

ラーメンの他にも宣伝される商品たちが数々。

全面に押し出される商品名

中国のラップも宣伝?

④魅力的でない料理

美味しそうな庶民料理が出て来ることがこのドラマのポイントの一つ。中国人視聴者も中国版「深夜食堂」の料理にかなり期待していました。しかし1話目の料理は中国では馴染みのないタコウィンナーや卵焼き、料理とは呼べないインスタントラーメンが登場。3話目の「魚松飯」は具体的にどんな料理かよくわからず、6話目では大衆食堂なのにおしゃれなハンバーガープレートが出てくる…。視聴者の共感が全く得られない状況になっています。また日本版ではドラマと料理がリンクしており、深いエピソードが料理の中に込められていますが、中国版ではあまりそれが感じられません。

日本版「深夜食堂」の料理の数々。

中国版「深夜食堂」の「魚松飯」とオープニングに登場する料理の数々。

⑤マスターの目の傷

日本版では、この目の傷からひと目で過去に何かあったことを匂わせる渋さがにじみ出ているのに対し、中国版では「まるで油条(中国の揚げパン)を揚げていたら油がはねてやけどしたようだ」と皮肉られています。また中国版のマスターはただの優しい人、という感じで演技の上でも渋さが全く感じられません。

日本版と中国版マスターの目の傷の違い

⑥もっとも大事な「深夜食堂」の魂が失われた

中国では日常生活において、お金持ちや権力者にばかりスポットがあたり、庶民は見向きもされないという社会背景があります。それに対し、日本版「深夜食堂」は庶民にスポットがあたり、演技や嘘っぽくない生活のいろいろな味が自然に描かれているため、文化も料理も日本のものであっても中国人の共感を呼び、感動の涙を流させる力がある点が評価されています。

その中国版がでるとあって、中国人視聴者の期待はかなりのものでした。ところが蓋をあけてみたら、大金持ちの超有名スターが庶民役をやっている。それだけでもう雰囲気はぶち壊し。よく知る大スターのイメージが強すぎて庶民の味は感じられないし、料理もチグハグ、人間ドラマも嘘っぽくうつります。一番大事な「深夜食堂」の魂が失われてしまったのです。

庶民役のスターたち

ドラマを見た感想

とにかく、中国のドラマなのに日本のものがいろいろ出てくるのでドラマの世界観がぐちゃぐちゃになり、なんだか良くわからない仕上がりになっちゃった、という感じです。

作務衣を着て中華包丁をもち、ハンバーガーを作るというシュールな展開はある意味面白いですね。

またこのドラマは料理よりも人間ドラマの方に焦点を当てたいようで、1話、2話はCMがひどすぎて論外なものの、話数が進んでいくと、人間ドラマとしてはわりと見れるかなと思います。まあそれは私が中国人の有名役者を全然知らないからだと思いますが。

興味がある方はぜひ見てみて下さい。ただ日本での視聴はちょっと難しいかもしれません。

中国版「深夜食堂」
http://www.iqiyi.com/a_19rrha32c9.html?vfm=2008_aldbd

コメント

  1. 金輝賓館 より:

    深夜食堂(華語版)観てます

    ご指摘、的確です
    庶民の「快餐」食文化とは異なる菜単選択は残念ですが、
    音(使用楽曲、等)はキレイですので、今後に期待しています

    今まででは、16話「紅焼肉(の満漢全席)」は好きです

    韓国版も最初は違和感てんこ盛りでしたが、何度か元祖と見比べると結構興味深い

    ご紹介深謝です!

    • liveincn より:

      コメントありがとうございます!

      確かに音楽は綺麗ですね。ドラマの内容も1話、2話はなんじゃこりゃ!だったものの、徐々に良くなっているのが感じられます。
      私も今後に期待しています!

      韓国版はまだ見たことがありません。今度見てみようかなと思います。

  2. 金輝賓館 より:

    日本人の多くの方にとって「豚汁」は最強ですので、
    最初のタイトルロールで日本人には胃袋鷲掴みwでしたからね

    中国の方にとって「豚汁」に匹敵するメニューって何なんでしょうかね?
    難しいですね・・
    また華語版はなぜ店が埠頭にあるのかも今後の展開に関わっているのでしょうか?
    大連あたりがベースなのかな?

    韓国版もぜひご覧ください

    連投失礼いたしました

    • liveincn より:

      豚汁に匹敵するメニュー、考えてみましたが確かに難しいですね。思い当たりません。
      中国版の唯一の看板メニューが「大锅菜」で、ぱっとしないと思いましたが仕方ないかもしれません。

      中国は広すぎて、中華料理といっても様々なので、これぞ!という一品だけを決めるのは至難の技かも。
      そもそも中国で深夜営業の食堂って設定が厳しい、なんていったらこのドラマを全否定することになってしまいますね。
      なんだかんだ言ってもこのドラマ結構好きなので頑張って欲しいです。