中国でVPNが使えなくなるって本当?
今中国に住む日本人の間で大騒ぎになっているニュースがあります。
それがこちら。
なんとも扇情的なタイトル。まるで中国で一切のVPNが使えなくなるような印象ですね。
実際Twitterなどでも、中国でYoutubeやFacebookはもう見れなくなるぞ!といったような情報が飛び交っています。果たしてそれは本当なのでしょうか。
一方、実際の中国工信部が正式発表した内容がこちら
これによると、
「工信部决定自2017年1月17日起至2018年3月31日,在全国范围内对互联网网络接入服务市场开展清理规范工作,主要目标任务为:依法查处互联网数据中心(IDC)业务、互联网接入服务(ISP)业务和内容分发网络(CDN)业务市场存在的无证经营、超范围经营、“层层转租”等违法行为。」 |
とあります。つまりどういうことかというと、
「工信部は2017年1月17日から2018年3月31日まで全国規模でインターネット接続市場の取締りを展開する。主な対象はデータセンタ(IDC)、インターネットサービスプロバイダ(ISP)、コンテンツデリバリネットワーク(CDN)業務の無許可営業や範囲を超えた営業を違法行為とすること。」
無許可営業を違法行為とする、ということは許可されたものならOK、ということですね。つまり、許可された業者のVPNを使えば違法行為ではない=中国で一切VPNが使えなくなる、ということはない、ということです。
そもそも中国だってVPNがないと困る企業が沢山あります。中国国営企業の新華社や人民日報だってTwitterをやっているし、多くの外国企業とやり取りする中国企業はVPNがないと仕事になりません。中国のIT技術者にしても、Googleが使えないとiOSやAndroidの開発がほぼできません。彼らにとってVPNは仕事に欠かせないツールです。よって全面禁止はありえません。
追加情報:
工信部が上記のニュースを出した後、あまりにもこのニュースに関心を寄せる人が多かったため、慌てて追加情報を出しています。
それがこちら。
仕事に使うのは問題ないよ、という話ですね。
「问:《通知》提出,未经电信主管部门批准,不得自行建立和租用专线(含虚拟专用网络VPN)等其他信道开展跨境经营活动。这是否会对外贸企业、跨国企业的正常运转造成影响?
答:《通知》关于跨境开展经营活动的规定,主要的依据是《国际通信出入口局管理办法》(原信息产业部令第22号),规范的对象是未经电信主管部门批准,无国际通信业务经营资质的企业或个人,租用国际专线或VPN,私自开展跨境的电信业务经营活动。外贸企业、跨国企业因办公自用等原因,需要通过专线等方式跨境联网时,可以向依法设置国际通信出入口局的电信业务经营者租用,《通知》的相关规定不会对其正常运转造成影响。」 |
外資系企業や多国籍企業が仕事の為にVPNが必要なら国際通信出入口局の電信業務経営者から借りたら大丈夫、と書いてあります。しかしこれには非常に高いコストがかかる上に、審査も厳しく、よっぽどの大企業でないと審査に通らないと思われます。
企業が仕事で使うのは大丈夫でも個人が趣味で使うのは?
大企業なら許可をとれば良いかもしれませんが、小さな企業や個人事業、また一般人が個人的にyoutubeなどを見るために使うのはどうでしょうか。
これは微妙なラインですが、上述した工信部の発表で「禁止」とは書いているものの、「違法」とまでは書かれていません。これは私の個人的な考えですが、それほど重大な問題になるとは思えません。
たとえば、最近日本では著作権の問題などからテレビ番組を勝手にネットにアップロードするのは違法です!と散々言われています。しかし現実はどうでしょうか。youtubeには沢山のテレビ番組がアップロードされ、削除されてもまた新しいものがアップロードされるいたちごっこ状態。見ている方もこれで逮捕されたなどという話は聞きません。こういうものは取り締まりたくてもなかなか難しいのが現状でしょう。
だからといってyoutubeにアップロードされたテレビ番組を見ても良いとは言っていません。私に違法行為を助長する意思はありません。ただ、中国でVPNを使ってyoutubeをみたら、中国の警察に捕まるんじゃないの!?と深刻に思いつめる必要はないだろう、ということです。
実際、海外で日本のテレビを見られるサービスはずっと前から日本でも中国でも違法ですが、普通に営業していますし。(iHOMEは何の理由か突然逃げてしまいましたが。でもiHOMEのサービスを購入していた人が捕まったとかは絶対ないはずです。)
そもそも中国はなぜVPNを規制するのか?
中国はなぜそれほどまでにVPNを嫌うのでしょうか。
YoutubeやFacebookの閲覧禁止?日本限定の動画サイト視聴禁止?まさかエロ動画視聴が悪いのか!?
中国はこんなことを規制するために一生懸命VPNを使わせないようにしているのでしょうか。
まさかそんな訳はありません。
中国政府が一番VPNでやって欲しくないこと、それは政府批判です。外国人よりも一番のターゲットはやはり自国民。中国人に見て欲しくないことを隠したり、VPNを使って海外に中国政府の批判や情報を流せないようにVPNを規制しているため、外国人が趣味のために動画をみたりSNSを使ったりするのにはそれほど関心がありません。しかし、中国政府が政府批判を恐れている以上、VPNを使って掲示板などの大勢の人が見ている場で中国政府を批判するような発言は控えるべきです。目立つ発言をした場合、捕まってしまうなどということも無いとは言い切れません。また微信やQQ、中国系のメールなどは監視の恐れがあるので、こちらも政府の悪口やVPNの話などはしないに越したことはないと思います。
もう一つの目的は、中国の違法業者を取り締まること。中国の違法VPN業者はもちろん、「黒寛帯」といわれる中国電信や中国聯通など大手のネット通信事業を借りて、「小区寛帯」としてネット回線を違法に又貸しする事業なども対象となっています。
中国国内の違法に営業するネットワーク事業関係の企業はこの政策によって大打撃を受けるでしょう。
海外のVPN業者は摘発されるのか
日本を含めた多くの海外のVPN業者はこの政策によって摘発、逮捕などされるのでしょうか。
これも私個人の考えですが、それは無いと思います。中国政府が手を出せるのは中国国内のみ、海外で正式に会社として営業し、外国で販売しているものを、利用者が中国で使用したとしても、それはその海外の国の法律に違法していなければ問題はなく、中国が手をだせるものではありません。
海外のVPN業者に対して中国政府にできることは、せいぜいVPN回線を切ったり、ブロックする、ということだけだと思われます。そうだとするなら結局ブロック→新しいサーバー構築のいたちごっこになるだけでしょう。
まとめ
色々書きましたが、中国でVPNの規制が強まる、ということは事実でしょう。工信部の発表によると、本格的に規制強化が始まるのは4月1日からのようです。
しかし騒ぎすぎる必要はありません。今までも毎年のように規制強化される時期はありました。落ち着いて成り行きを見守りましょう。
コメント
結局2018年2月から個人向けも規制だろうがよいい加減にしろや
この記事よりも新しく書いた下記の記事はお読みいただけましたでしょうか?
大手中国系VPNが業務停止 日本人利用者の今後は?
https://blog.liveincn.com/vpn/china-vpn-latest-situation
中国の政策は急に変わるので、もちろん今後もずっとVPNが絶対に使えるという保証は誰にもできませんが、
あくまでこれは私個人の考えではありますが、海外の個人用VPNを完全に停止させることは理論的に不可能だと思っています。