この記事を読む前に、先日書いた大手中国系VPNが業務停止 日本人利用者の今後は?を先に読まれる事をお勧めします。
前回の記事では、大手企業などではない個人利用の場合、中国のVPN業者ではなく海外のちゃんとしたVPNサービスを提供する企業なら大丈夫だろうという話をしました。そして中国国内では個人向けの許可証を持つサービスはない、ということでした。
それを踏まえて中国でまだVPNは使える?使っても大丈夫?という疑問を前提に、他の選択肢はあるのかと、お勧めのVPN、お勧めのVPN接続方式(PPTP/L2TPなど)を紹介します。
VPNの選択のポイント
【免許を取得した中国有料VPN事業者】:大手法人向き
法人の場合は、中国の合法国際IP-VPN業者のサービスを購入しようと思えばできます。ただ料金は毎月10万円以上かかります。それほど値段が高いのに、海外との接続スピードは普通の格安VPNとそれほど変わるものではありません。
【中国の無許可の有料・無料業者】:辞めたほうがいい
これから中国国内のVPN業者は厳しく取り締まられる一方です。
【無料VPN】:辞めたほうがいい
理由は以前「無料VPNを避けるべき理由」で詳しく書きましたのでご参照ください。
【英語圏の有料VPN業者】:英語ができる人ならお勧め
特にアメリカで実力があり、世界中で大規模展開しているVPN大手は何社もあります。数百台のVPNサーバーを世界各国に設置していますし、接続専用アプリも充実、24時間チャットでのサポートもありますのでお勧めです。ただ欠点もあって、一つは有名すぎて中国にしっかりと目をつけられているので、大手であるがゆえにブロックされやすい傾向があります。もう一つはサイトに日本語表示があっても、日本語のサポートは提供しないところがほとんどですので、問題があった場合には英語で問い合わせする必要があります。
【日本の有料VPN業者】:最も現実的
日本人に特化したサービスが多いので、中国人ユーザーが少ないため、中国で比較的ブロック対象になりにくい傾向があります。また日本語で問い合わせできる点が安心です。通信事業届けを提出している会社を選択するのが良いでしょう。またPPTPやL2TPという接続方式は、大会などが開催される時期は間違いなく早い段階でブロックされるので、他の接続方式も提供している業者を選ぶのが良いでしょう。
【自分で日本にVPNサーバーを置く】:Linuxやネット知識に詳しい人向け
自宅のルーターや日本のサーバーを利用し、VPNサーバーを設置するのも一つの選択肢です。可能ならば安全で良い方法です。ただ、自分でサーバーを立ち上げ、管理するにはLinuxやネット知識が必要です。
VPNの接続方式の違いと選択
VPNの接続方式はたくさんあり、業者によって提供する方式が違います。たくさんの接続方式を提供する業者も出てきて、どの接続方式を選ぶべきなのかわからない人も多いと思います。
VPNの接続方式一覧
VPN | セキュリティ | 速度 | 安定性 | 互換性 | 結論 |
PPTP | 低い | わりと早い | 中国においてはよくブロックされる | 昔は非常に良かった。現在iOS/macOSはサポート外 | お勧めしない |
L2TP | PPTPよりは高い | PPTPに劣る | 中国においてはよくブロックされる | 非常に良い | まだ使えるが、中国での安定性は低い |
OpenVPN | 高いレベル | L2TPよりは早い | 中国においてはブロック対象になりやすい | ほとんどの端末で専用ソフトをインストールする必要あり | 独自に構築したOpenVPNサーバーなら良いが、大量ユーザーのサーバーはブロックされやすい |
SSTP | 高いレベル | OpenVPNと同レベル | 比較的ブロックされにくい | Windowsのみ | 汎用性が低いのでお勧めしない |
IPSec | 高いレベル | 非常に早い | 比較的ブロックされにくい | 非常に良い | お勧め |
IKEv2 | 高いレベル | L2TP、PPTP、SSTP よりも早い | 比較的ブロックされにくい | 最新iOS、macOS、Windows7以上利用可、Androidは別途アプリが必要 | お勧め |
AnyConnect | IPSecと同じ | 非常に早い | 比較的ブロックされにくい | 全ての端末に別途のソフト が必要 | ほとんどは法人ユーザー |
PacketiX/ソフトイーサ | IPSecと同じ | 非常に早い | 比較的ブロックされにくい | Windowsのみ | Windowsならお勧め |
いま主流のVPN接続方式のお勧め順位はこんな感じです。
IKEv2 > IPSec > OpenVPN > L2TP>PPTP
PPTPは技術が非常に古く安全性に問題があるため、現在iphoneやMacでは既にサポートしていません。
Proxyの接続方式一覧:基本的にHTTP通信のみ
※HTTP通信とはブラウザとWebサーバー間で行なう通信のこと。つまりパソコンのブラウザでしか使えません。(※ブラウザ以外でもDropboxなど、プロキシを設定できるソフトも一部あります。)
プロキシ | セキュリティ | 速度 | 安定性 | 互換性 | 結論 |
socks4/socks5 | ほぼない | 普通 | ブロックされやすい | 使える端末は多いが、設定が面倒 | お勧めしない |
暗号化プロキシ | 暗号化してあれば高い | 普通 | ブロックされにくい | 専用クライントが必要、設定が面倒 | パソコンに詳しい方のみお勧め |
ShadowSocks | 高い | 速い | ブロックされにくい | 専用クライントが必要、設定が面倒 | パソコンに詳しい方のみお勧め |
HTTPS式プロキシ | 高い | 非常に速い | ブロックされにくい | mac/Win/Linuxなどパソコンしか使えない | お勧め |
上記の他に、企業の独自開発の接続方式があります。例えばvyprvpnの「Chameleon」や良之助VPNの「RyoVPN Chrome版」と「RyoVPNアプリ」などがそれにあたります。独自開発の接続方式は中国においてブロックされにくい特徴があります。
また使い勝手もよく、例えば良之助VPNの「RyoVPN Chrome版」は一度設定すればChromeを開くだけで使え、接続や切断などのボタンを押す必要がありません。PPTPやL2TPなどは接続すると海外のサイトは見れるようになるものの、中国のサイトは遅くなってしまう欠点がありますが、これなら日本にいるときと同じように海外のサイトも中国のサイトもサクサク見ることができます。サーバーもボタン一つで簡単に選択/変更できるのでとても便利です。
中国の「グレート・ファイアウォール」はかなりのパワーがあります。ほとんどのVPNやプロキシの接続方式を判別することが可能です。VPNの技術の複雑さで「グレート・ファイアウォール」を超えることはほぼ不可能です。
しかしそうはいっても、中国政府が一般のビジネス用のVPNを全て完全に切断することはできないため、ビジネスで最も利用されているVPN接続方式は逆にブロックされにくいという不思議なことになります。
総合的に一番バランスを取るなら、VPNの場合はIKEv2とIPSecが一番お勧めです。パソコンでブラウザの利用を中心とするなら、今のところRyoVPN Chrome版が非常に使いやすいと思います。
ちなみに、ブラウザで一番お勧めするのはChromeです。特に中国にいる人は、中国系のブラウザを使うと変なソフトが勝手にダウンロードされてしまったりするので、中国系ブラウザは避けたほうが無難です。