2018年12月末、広東省で携帯にVPNアプリを入れていたことが見つかった中国人が罰金千元の処罰を受けた例が出たというニュースが流れました。
これまでにも中国のVPN業者が業務停止処分を受けたというニュースが流れてきましたが、一般VPNユーザーに罰金が課されたのはこれが初めてです。
日本人は中国でVPNを使っても大丈夫?
中国に滞在する日本人を含めた外国人は、VPNがないと大変困ります。
Google、Gmail、Lineなどのサイトは今や仕事や生活の基盤です。
特に中国でビジネスする方は、VPNがないと仕事になりません。
本当にVPNを完全規制してしまえば、中国の経済にも大きな影響がでます。
現在中国のVPN利用者は最低でも一千万人を超えると言われています。
常識的な利用をしている限り、これからVPNを使用している人をどんどん罰していくというようなことは到底考えられません。
以前中国のVPN業者が一掃された時も少し騒ぎになりましたが、結果的には今もVPNは使えています。今回の罰金のニュースも、VPNを使ったから逮捕されたのではなく、別の容疑で捜査された結果VPNも見つかったのでついでに、というのが実情です。
下記の記事で現在の中国でVPNを完全規制することが難しい理由を説明していますので、ご参考ください。
大手中国系VPNが業務停止 日本人利用者の今後は?
スマホのどんな情報が収集されるのか
とは言え、中国でのVPN使用に注意を払うに越したことはありません。中国に短期滞在しかしない方はそれほど心配もいらないでしょうが、中国に長期滞在されていたり、仕事で頻繁に中国に行く方のために、安全性やプライバシーにリスクが高いものをまとめました。
1.中国系のスマートフォン
中国で売られている中国系スマホは、ほとんど各メーカーが改造したAndroidで、日本のスマホよりも情報収集されやすいようになっています。
技術的に簡単に収集される情報:携帯の位置情報、電話番号、IPアドレス、製造ID、アカウント情報、機種やバージョン、インストールされたアプリのリスト(VPNアプリがある場合は、携帯メーカーのサーバーに記録される可能性がある)、Wi-Fiの接続情報など
2.中国系のアプリ
中国系の「中文输入法」では頻繁に入力される言葉や中国政府が嫌うワードが、中国系ウェブブラウザ(特に携帯内蔵のブラウザ)ではアクセスしたサイトのURLやアクセス時間などが収集されます。アクセス記録によって、ユーザーの年齢や好みなどがわかる情報も自動収集されますが、これはほぼ広告のためで、政府関係の目的で使われるかどうかは不明です。
3.中国系のSNS
WechatやQQなどの中国のSNSツールは最も監視されているといえます。
AIなどの最新技術や人の手による審査により「都合が悪い」情報が常に検出されています。
WeChatやQQなどを利用する場合は、自分の情報を全部見られていると思って利用するほうが良いでしょう。中国の悪口や政治、宗教的な発言は自分のために絶対にやめるべきです。
できるだけ安全にスマホを使うには
一番安全なのは、SimフリーのiPhoneや日本仕様のAndroidスマホで、できるだけ中国系のアプリやブラウザなどは入れずに使うことです。
しかし、中国で仕事や生活をしていれば、どうしても中国系の携帯の方が便利だったり、中国系のアプリが必要になったりするでしょう。
VPNを多用しつつ、中国現地のアプリやツールもよく使う方であれば、Line、Google、FacebookなどをVPNと共に利用する日本仕様のスマホと、Wechatやbaiduを使う中国仕様スマホを分けて、2台持ちするとより安心です。
中国現地での生活メインだから中国のスマホを使いたいが、VPNも趣味などでたまに使いたい、スマホ2台は無理、という方は下記に気をつけましょう。
- 中国系のSNSツール(Wechat、QQなど)や、中国系のメール(126、168、qqなど)で中国政府が嫌うVPNや政治的、宗教的な話をしない。これらの話をするならLINEやSkype、GmailやYahooメール、hotmailなど、中国系でないツールを使いましょう。
- Xiaomi、Huaweiなど中国で購入した携帯をRoot化などで改造しない。
- よくわからない中国系アプリは一切インストールしない。(すべての情報がメーカー側、アプリ運営会社のサーバー側に記録されることを意識した上で利用する。)
- 銀行アプリやAliPayなどは通信が暗号化されているため、一般的には他人に盗聴される可能性が低いので、過大な心配は無用。
VPNの選択
絶対安全!と言えるようなVPNはないですが、できる限りより安全に使えるVPNの選び方を紹介します。
- 中国で有名な海外の大手VPN業者は、有名であれば有名であるほど中国のターゲットになりやすいので、実はマイナーな業者の方がおすすめ(もちろん運営者が不明な怪しい業者は論外)
- 中国人が中国国内で運営するVPNサービスを利用しない(もうほぼないと思いますが)
- 中国人が海外に会社をおいて経営しているVPNサービスを利用しない
- 無料VPNアプリに気をつける
- 複数のVPN接続方式を用意する
- 中国国有通信企業の唯一「合法的な」VPNサービスは個人向けではない
VPN許可の免許について一時話題になりましたが、これは外資系大手企業向けの非常に高価なサービスで、すべての通信が中国サーバーで管理されています。個人契約はできません。中小企業は予算的に非現実的です。あるVPN関連のまとめサイトで「合法のVPNサービスを使いましょう」といった記述を見たことがありますが、個人が使える価格帯のVPNサービスで中国の免許をとった会社があるはずがありません。
結論
- 中国に短期間行くだけの人は日本のスマホであまり中国系のアプリやソフトを使わなければ大丈夫。
- VPNも中国のアプリやソフトも両方頻繁に使う人は、携帯2台持ちで使い分けがおすすめ。
- 中国の携帯で中国系アプリも使いつつ、VPNもたまに使いたい人は、見られても大丈夫な内容にとどめておく。ヤバそうな内容(政治的内容や有名人の悪口、VPNの話題など)は必ず中国系以外のアプリやソフトを使う。
言うまでもないことですが、中国で捕まるような犯罪はしないこと、スマホで気軽に軍事施設や警察関係などの写真をとらないことにも気をつけましょう。